【コラム】今さらながら、「日本のバル」と「本場のバル」について
2017/11/23
「スペインバル」「フレンチバル」「イタリアンバル」「和バル」「肉バル」・・・。
街には「バル」を看板に掲げるお店があふれていますね。今さらながらですが、「日本のバル」が「本場のバル」とどう違うのか、あらためて知ってみませんか?
【そもそも本格的「バル」とは】
「Bar」と書いて、スペイン語で「バル」、イタリア語で「バール」、英語で「バー」と読みます。今では知っている方は大勢いらっしゃいますね。
しかし、ふた昔前なら[Bar]=「バー」と読まれることが非常に多く「夜だけの営業で、カウンターでカクテルや水割りなどのお酒を中心に出すお店」としか思われませんでした。
現在、「バル」というと日本では洋風の居酒屋さんという印象を持たれる方もあるかもしれませんが、スペインやイタリアなどの南ヨーロッパでは、「バル(バール)」は喫茶店でもあり、食堂でもあり、居酒屋でもあります。
イタリアでは、1日に何回も、しかも同じバールに行くことは珍しくありません。また来たの?なんて誰も思わない。
朝食はブリオッシュ(バターや卵、砂糖をたっぷりと使ったパン)とエスプレッソやカプチーノ。昼食にはパニーノ(日本でも、もうお馴染みとなりましたね)。夜はおつまみとアペリティーヴォ(食前酒)をいただきにバールを訪れます。
エスプレッソだけを飲みに立ち寄り、お店を出るまでの所要時間がたった2~3分ということもイタリア人にはよくあります。
同様にスペインやイタリアでは、夕食の時間がかなり遅いので、夕方に軽食とお酒を楽しむ場としてバルやバールを利用します。
「バル(バール)」は「日本のバル」とは違い、朝から夜まで、時間により気分によりお腹の減り具合により手軽に使えるので、人々の生活の一部になっています。バルやバールなくしては、生活が成り立たないのです!
バル(バール)にはカウンターがあり、立ったままコーヒーやお酒を飲んだり、手早くランチを済ませたりすることも多く、気軽に日常的に利用できます。そしてお値段も良心的。
ただ、テーブル席もあり座ってゆっくり飲むこともできますが、同じ飲み物でも、カウンターで立ち飲みをする場合よりお値段が高くなります。
バル(バール)は、美味しいエスプレッソが飲めたりお腹を満たすためだけでなく、情報交換の場、新しい出会いの場としての役割もあります。
みなそれぞれに、お気に入りで行きつけのバル(バール)があるので、そこに行けばいるかもしれない常連仲間をお目当てに足を運ぶことも。
日本にもそんな使い勝手のよいお店があれば嬉しいのですが、どの時間帯に行っても軽食やスイーツ、アルコールがあるという点では、チェーン店のカフェがそれに近いですね。
本場スペインやイタリアなどでは家族経営のバル(バール)もありますが、日本で本場のバル(バール)を個人で開業するとなると、客層の見極めや立地の選別、営業時間が長い分、メニューの管理や従業員の確保など、運営の大変さも感じます。
【日本のバルいろいろ】
例えば「フレンチバル」・・・「フレンチ」に「バル」が付くと、高級で敷居の高いフレンチが、日常使いのお店として少しカジュアルな印象に。「肉バル」も、焼き肉がおしゃれで気軽な感覚でいただける印象に。
”割烹バル””日本酒専門バル””板前バル”などの「和バル」・・・和洋折衷の料理を出すお店もあれば、日本酒を豊富に扱うお店、内装を和にするお店など、洋風のイメージがある「バル」に、和の要素をどう取り入れているかはお店によって様々。
本来なら、「バル」がスペイン語であることを考えると、言葉として正しいのは「スペインバル」だけ。
日本人は海外から入って来た本来のものからイイとこ取りをして、独自の感覚でより発展させるのが上手です。
「バル(バール)」の本家、スペインやイタリアとは違う、日本独自の「バル」が進化してきました。
仕事が終わってからすぐには自宅へ帰らず、どこかで一杯。美味しいお酒と料理で盛り上がる、仕事の疲れから解放してくれる時間と空間。それを求めるのは日本人も同じですね。